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少しの酒にもご用心!?

2016.08.23

飲酒「酒は百薬の長、されど万病の元」と漢書にもあるように、古い時代から適度なおはストレスを和らげ人間関係を円滑にすると言われてきました。しかし、過度の飲酒は心身に悪影響を及ぼす場合があるということもまた然りであります。

近年の研究によれば、HIV陽性者は、たとえ抗ウィルス薬による治療を受けていたとしても、HIV陰性者に比べ少量の飲酒(平均一杯/日)でも身体に悪影響を受けやすく、死亡率も増加するということが明らかになりました。

アメリカのエール大学を中心とした研究チームは、2008年~2012年にかけて退役軍人コホート研究(VACS)からHIV陽性/陰性別にアルコール摂取と死亡・身体障害との関連を調べました。
18,145人のHIV陽性者と42,228人のHIV陰性者に対して実施した、WHO(世界保健機関)が作成したアルコール使用障害特定テストの簡易版「AUDIT-C」を使った質問紙調査の結果を分析しました。

その結果、アルコールの摂取量と死亡あるいは身体障害が関連する境目の値は、HIVの有無により差が出ました。HIV陽性者では、AUDIT-Cスコアが4点以上の者または月平均30ドリンク以上の飲酒で死亡リスクの上昇が認められました。それに対してHIV陰性者ではAUDIT-Cスコア7点以上または月平均70ドリンク以上の飲酒で死亡リスクの上昇がみられました。同様にHIV陽性者ではAUDIT-Cスコアが5~7点でも身体障害リスクの上昇がみられましたが、HIV陰性者ではAUDIT-Cスコアが8点以上の者にのみ身体障害のリスクが認められました。

つまり、HIV陽性者の場合は、たとえ一日一ドリンク程度の少量の飲酒でも身体に悪影響を及ぼすリスクが上昇します。そのために、飲酒の上限をより低くする必要があると言えます。この研究に参加したHIV陽性者の76%は血中ウィルス量が検出限界(500コピー/mL)未満であり、いわば治療がうまくいっている人たちでした。にもかかわらずHIV陰性者に比べてHIV陽性の人たちでは飲酒により身体的障害のリスクがより高くなることが、この研究によって始めて明らかになりました。今後こうした日常生活と健康の関連がより明確になっていくことが期待されています。

注)ここでの「1ドリンク」とは純アルコール量換算で10g相当のことを言います。
ドリンク数の計算の仕方は以下のとおりです。

純アルコール量(g) = 飲んだ酒の量(mL) × 酒の濃度(度数/100) × 0.8
ドリンク数 = 純アルコール量(g)÷ 10

たとえば、日本酒(15 度)1 合のドリンク数は以下のようになります。

180mL(1 合)× 0.15× 0.8 = 21.6 グラム(約2.2 ドリンク)

ビール(5 %)350mL缶は、

350mL × 0.05 × 0.8 = 14 グラム(1.4 ドリンク)